勘定科目とは何?仕訳の分類など分かりやすく解説

勘定科目とは何かを分類・使用例をもとに詳しく解説

この記事では、これから経理業務に携わる方や簿記の勉強を始めようとする方に向けて、「勘定科目」について基礎から解説します。

この記事を最後までお読みいただくことで、「勘定科目とは何か」「勘定科目の5つの分類と使用例」「適切な勘定科目を設定するポイント」を理解することができます。

まずは「勘定科目とは何か」から解説していきます。

目次

勘定科目とは「グループ分けするためのラベル」

勘定科目とは「グループ分けするためのラベル」

勘定科目とは

勘定科目とは、一言でいうと「あらゆる取引をグループ分けするためのラベル」です。

「経費(費用)の支払い」などの取引をこのラベルに沿って正しく分類すると、企業や個人事業にどれだけの資産や負債があるか(財政状態)や、企業や個人事業がいくら儲かっているか(経営成績)を正しく把握することができます。

勘定科目がないとどうなる?

「取引ごとにいちいちラベル付けをするのは面倒。経営で大事なのは現金だ。

現金の動きは預金通帳で追えるのだから、勘定科目なんて使わなくても問題ない」と考えている個人経営のパン屋がいたとします。

このパン屋を例に取り、勘定科目がない場合にどういったことが起きるのかを見てみましょう。

X年1月1日時点におけるパン屋の預金通帳残高は500万円で、X年12月31日における残高は300万円だったとします。

つまり、パン屋の預金はX年の1年間で200万円減ったことになりますが、勘定科目がないため「なぜ200万円減ったか」の正確な理由をパン屋が把握することはできません。

現金が200万円減った理由が、売上が減ったためか、経費(費用)が増えたためか、あるいは新たに設備投資をしたためかを把握できないと、「今後このパン屋を続けていくべきか」という重要な判断を正しく行うこともできなくなってしまいます。

一方、勘定科目があれば「現金が200万円減った理由」の分析を行うことができるため、現状の把握と改善策の立案が可能となります。

このように、勘定科目は企業や個人事業の経営に極めて重要な意味を持っています。

以上、勘定科目とは「あらゆる取引をグループ分けするためのラベル」であること、勘定科目を使わないと企業や個人事業の財政状態や経営成績を正しく把握することができないことを解説しました。

次に、勘定科目の大きな括り(チーム分けのようなものだと思ってください)として、5つの分類とその使用例を解説していきます。

勘定科目の5つの分類と使用例

勘定科目の5つの分類と使用例

勘定科目の5つの分類

勘定科目は、大きな括りで「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つに分類されます。

このうち、「資産」「負債」「純資産」は企業や個人事業の財政状態を示す「貸借対照表」を構成し、「収益」「費用」は企業や個人事業の経営成績を示す「損益計算書」を構成します。

以下では、5つの分類について、それぞれの性質や使用例を解説します。

まずは、「資産」「負債」「純資産」について見ていきましょう。

資産

まずは資産です。資産とは「プラスの財産」を意味します。

資産の代表例は現金、原材料・商品・製品などの棚卸資産、建物(不動産)や備品などの有形固定資産、ソフトウェアやノウハウなどの無形固定資産、有価証券などの金融資産ですが、その他代金を前払した際に使う前渡金や、金額が未確定な代金を仮に払っておく際に使う仮払金なども資産項目です(経理処理上、資産ではなく費用に計上される備品もあることに注意してください)。

資産が増える場合は借方に、資産が減る場合は貸方に記帳します(帳簿に記載することを「記帳」といいます)。

たとえば、会社が営業用自動車を購入して自動車販売店に100万円を支払ったとします。この場合「自動車」という資産が増えたので、借方に「自動車100万円」と記帳します。

一方、自動車を得た代わりに現金100万円を支払ったので、「現金」という資産が減ります。そのため、貸方に「現金100万円」と記帳します。

負債

次は負債です。負債とは「マイナスの財産」を意味します。

「マイナスの財産」という表現だと少し理解しづらい方は、「将来のどこかの時点で資産(典型的なものは現金)を誰かに支払わなければならない義務」と言い換えると具体的なイメージがつかめるかも知れません。

負債の代表例は借入金(いわゆる借金)、未払金、買掛金、前受金、未払税金などです。

資産とは逆で、負債が増える場合は貸方に、負債が減る場合は借方に記帳します。たとえば、銀行から1,000万円を借りたとします。

この場合、「借入金」という負債が増えたので、貸方に「借入金1,000万円」と記帳します(なお、この場合の相手勘定は「現金」です。

銀行から1,000万円を借りるということは現金という資産が1,000万円増えることを意味するので、借方に「現金1,000万円」と記帳します)。

純資産

最後は純資産です。純資産とは「会社の事業の元手とこれまでの利益の蓄積額」を意味します。

会社における純資産は、個人事業における「元入金」とほぼ同義の概念です。純資産の代表例は資本金、資本準備金、資本剰余金です。

負債と同じく、純資産が増える場合は貸方に、純資産が減る場合は借方に記帳します。

たとえば、会社が新株発行により増資(資本金の額を増やすこと)をした場合、「資本金」という純資産が増えたので、貸方に「資本金1,000万円」と記帳します。

純資産は資産と負債の差額で計算するため、いずれもプラスの値の場合は「資産=負債+純資産」の計算式が常に成立します。

このうち資産は借方、負債及び純資産は貸方に来る項目であり、これらの項目を集計した貸借対照表の借方と貸方は常に一致します。

一致しない場合は、決算整理仕訳に誤りがある、会計仕訳に重複や不足がある、貸借が逆な仕訳が投入されているなど、仕訳や経理処理に何らかのミスがあることを意味します。

仕訳の内訳を確認したり、要素別の勘定科目分析を行うなどして、これらのミスを解消するようにしましょう(ミスが解消して貸借が一致しないと決算を締めることができません)。

以上、「資産」「負債」「純資産」の性質や使用例を解説しました。

次は「収益」「費用」について見ていきましょう。

収益

収益とは「利益を増加させる項目」を意味します。収益の代表例は売上や雑収入です。

収益が増える場合は貸方に、収益が減る場合は借方に記帳します。たとえば、会社が商品を販売し、客から現金1,000円を受け取ったとします。

この場合「売上」という収益が増えたので、貸方に「売上1,000円」と記帳します。

一方、会社はこの取引で現金1,000円を受け取った(=現金という資産が1,000円増加した)ため、借方に「現金1,000円」と記帳します。

経理業務を初めて担当する方や、これまで会計や簿記に触れてこなかった方には、「収益が増加した場合に借方と貸方のどちらに書くか」を毎回悩む方もいることと思います。

そんな方におすすめなのが、まずは「資産の増加は借方」とだけ覚えておいて、「商品を売り上げて客から現金1,000円を受け取った」という具体的な場面で考える方法です。

「仕訳の貸借は釣り合う(借方にも貸方にも同じ金額が入る)」という性質を利用して、まずは借方に現金1,000円を置きます。

そうすると、勘定科目を入れるスペースがあるのは貸方ですから、「売上1,000円」を貸方に記帳します。

費用

費用とは「利益を減少させる項目」を意味します。

費用の代表例は売上原価、従業員給与、銀行手数料、支払リース料、梱包運賃、旅費、郵便代、文房具の購入費用、ガソリン代や軽油代などの燃料費、手土産代や喫茶代といった雑費などです。いわゆる「経費」は費用の中に包含されます。

収益とは逆で、費用が増える場合は借方に、費用が減る場合は貸方に記帳します。

たとえば、会社が授業員に給与として10万円を支払ったとします。この場合「従業員給与」という費用が増えたので、借方に「従業員給与10万円」と記帳します。

以上、「収益」「費用」の性質や使用例を解説しました。

「費用」の勘定科目は「収益」の勘定科目よりも数が多いことが一般的であるため、「どの勘定科目を使えばよいのだろうか・・・」と悩むことも収益より費用の方が多いです。

経理担当者の方の中には、営業担当者や総務担当者から回ってきた領収書を見て、「この経費はいったい何費の勘定科目を使うべきか」と悩んだことがある方も多いと思います。

以下では、「この仕訳にはどの勘定科目を使うべきか」と悩んだことのある方に向けて、適切な勘定科目を設定するポイントを3つ紹介します。

経費における勘定科目一覧

経費における勘定科目一覧

勘定科目 内容・具体例
給与賃金 従業員へ支払う給与・賃金・手当のほか制服代・食事代など現物支給のものも含む。退職金を含める場合もある。
地代家賃 事務所や店舗、工場、倉庫、駐車場などの敷地の地代、建物を賃貸している場合の賃料。(自宅兼店舗の場合は、自宅分を除外する)
租税公課 経費に該当する税金や負担金などに支払った費用。事業税、固定資産税、自動車税不動産取得税、登録免許税、印紙税などの税金。印鑑証明書や住民票の発行手数料、商工会議所などの会費・組合費なども含む。
水道光熱費 事業で使用した電気料金、水道・下水道料金、ガス料金、石油代、灯油代など(自宅兼店舗の場合は、自宅分を除外する)
通信費 電話料金やファックス代、インターネット接続料、携帯電話料金、切手代、はがき代など。バイク便なども含む。
旅費交通費 電車賃、バス代、タクシー代、高速料金、通勤定期代、時間駐車場代など。出張旅費やホテルの宿泊費用なども含む。
広告宣伝費 商品やサービスを販売するために必要な費用。雑誌や新聞、テレビやチラシなどの広告費、試供品などの費用、ショーウィンドウの陳列装飾費用など。
接待交際費 取引先への接待費用(取引先の送迎に支出した費用も含む)や、打ち合わせ時など事業用の茶菓子代、贈答品代、お中元・お歳暮、業務上関わりがある人の結婚式のご祝儀代などの慶弔金など
消耗品費 コピー用紙や文房具、名刺などの消耗品。使用可能期間が1年未満もしくは取得価額が10万円未満の什器備品が対象。
福利厚生費 従業員の慰安や衛生、医療や保健などを目的とした費用。社宅の賃料や慶弔見舞金、忘年会や新年会の費用など。また、健康保険や厚生年金、雇用保険の事業主負担分も含む。
減価償却費 取得金額が10万円を超える建物、機械、船舶、車両、器具備品などの償却資産を、購入年度に全額計上せずに耐用年数に応じて分配し計上する費用。耐用年数は普通自動車が6年、パソコンが4年など法律で決められている。
損害保険料 万が一の損害から事業を守るためにかける保険料。火災保険料や自動車保険料など
荷造運賃 販売商品の出荷に要する包装材料費、荷造りした者への賃金、商品の輸送費用など
外注工賃 業務の一部を外部に発注した場合にかかる費用。外部業者に修理・加工を発注した場合の加工賃や手間賃など。
貸倒金 (貸倒損失) 売掛金や受取手形、貸付金などの金銭債権で回収不能となったもの
修繕費 事務所や店舗、自動車、機械、器具備品の修繕などのために支出した費用。ただし、資産価値が向上する場合の支出は「資本的支出」に該当するため、減価償却資産の取得価額に含める。
利子割引料 事業用資金の借入の支払利息や受取手形の割引料など。
賃借料(リース料) 機材や自動車、OA機器などのレンタル料。
新聞図書費 事業上必要な新聞や書籍・雑誌代などの費用
支払手数料 事業上発生する取引に関する手数料や費用、報酬などの費用。振込手数料、仲介手数料、代引き手数料、弁護士・税理士等に支払った報酬など。
研究開発費 これまでにはない新しい製品やサービスの開発のための費用。新製品研究開発のための研修費用やセミナー受講費なども含まれる。
繰延資産 本来費用として計上するべきものを少額ずつ費用化する資産。創立費や開業費、社債発行費など。
雑費 事業に必要な経費で勘定科目一覧にない費用

適切な科目を設定するポイントとは

適切な科目を設定するポイントとは

「適切な勘定科目」は企業が自由に決める

1点目のポイントは「適切な勘定科目は企業が自由に決めてよい」という点です。

「この費用についてはこの勘定科目を使いなさい」という統一ルール(会計基準など)はありませんし、「勘定科目が間違っているから税務調査で問題になる」ということも原則としてありません(ただし、減価償却費については「償却費として損金経理すること」が法人税法における減価償却費の損金算入要件となるなどの例外もあるので注意してください)。

たとえば、「会社で英語研修をしてくれた講師に謝礼2万円を支払う。支払いは会社の銀行預金口座から講師指定の口座へ振り込む」という取引を考えてみましょう。

この仕訳の勘定科目として、企業Aは研修費/現金預金という勘定科目を使い、企業Bは謝礼金/現金という勘定科目を使ったとします(スラッシュの左側は借方を、右側は貸方を示します)。

この場合、費用の勘定科目も資産の勘定科目も、どちらかの企業が間違っているということはありません。

日本語的な意味が少し異なったり、表現揺れがあっても、その示す内容(研修のために講師へ支払う謝礼金的性質を持つ経費)が同じなのであれば大きな問題になることはないでしょう。

もっとも、「企業が自由に決めてよい」とはいえ、完全にフリーハンドでよいという意味ではない点は注意してください。

先の例で、企業Cが雑収入/現金という仕訳を切ったとしても仕訳の貸借は合いますが、「費用(のプラス)」の勘定科目を使うべき場面で「収益(のマイナス)」という勘定科目を使うのはさすがに「適切な勘定科目を選定できている」とは言い難いです。

最低限、先に紹介した「勘定科目の5つの分類」を横断しないようにしましょう。

最近では、freeeやMoneyforwardといった会計ソフトを使う企業も増えています。これらの会計ソフトにはあらかじめ勘定科目が設定されているため、ひとまずはこれらの勘定科目を使うことをおすすめします。

経理担当者が「得たい情報」で考える

2点目のポイントは、「どの勘定科目を設定するかは、経理担当者が得たい情報で考える」という点です。

たとえば、これまでは相手側が誰であっても同じ「売掛金」の勘定科目を使っていた企業が、ここ数年間で急速に子会社との取引が増えたとします。

会計士や上司から「子会社に対する売掛金は何円あるか」と頻繁に聞かれるようになった経理担当者は、新たに「子会社売掛金」という勘定科目を新設して、これらの質問に素早く回答できるようにしました。

これは、勘定科目を上手に使った例です。

同じ科目の使用を継続する

3点目のポイントは、「同じ勘定科目の使用を継続する」という点です。

1点目のポイントで、「勘定科目が多少異なっていてもその示す内容が同じなのであれば大きな問題になることはない」と言いましたが、これは別の企業との比較の観点からであって、同じ企業が頻繁に(たとえば毎年)勘定科目を変えることは、

①年度間の比較可能性を損なう、
②経理担当者の作業ミスを誘発する、
③会計データの利用者(経営者、会計士など)の誤解を招く可能性がある、という点からおすすめしません。

たとえば、ボールペンなどの文房具の購入に使う経費を「文房具費」としたのであれば、よほどの理由がない限りは、同じ「文房具費」の使用を継続することをおすすめします。

まとめ

まとめ

以上、「勘定科目とは何か」「勘定科目の5つの分類と使用例」「適切な勘定科目を設定するポイント」について解説しました。

「勘定科目とは何か」の章では、勘定科目とは「あらゆる取引をグループ分けするためのラベル」であること、勘定科目を使わないと企業や個人事業の財政状態や経営成績を正しく把握することできないため勘定科目が重要な役割を果たすことを紹介しました。

「勘定科目の5つの分類と使用例」の章では、勘定科目が「資産」「負債」「純資産」「収益」「費用」の5つに分類され、「資産」「負債」「純資産」で1セット、「収益」「費用」で1セットであることを紹介しました。

「適切な勘定科目を設定するポイント」の章では、3つのポイントとして、①適切な勘定科目は企業が自由に決めてよい、②どの勘定科目を設定するかは経理担当者が得たい情報で考える、③同じ勘定科目の使用を継続するという点を紹介しました。

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